こんにちは!
ketoraaaです。
新年度にまつわる話が続きます。
この4月から職場に新入社員が入ってきたという方も多いのではないでしょうか。
新入社員と5歳も離れていれば、大きなジェネレーションギャップを感じることも少なくありません。
挨拶ができない、飲み会に来ない、報連相ができない、返事ができない、敬語が使えない新人にイライラ・・・という方もいらっしゃるかもしれません。
試しに「コーチング」というワードでAmazonを検索してみてください。
一体何冊の書籍が出てきましたか?
そのくらい、人材育成は多くの人が悩み、様々な工夫が試みられてきた分野です。
私の身近でも、「なんであいつは○○なんだ!」という話を聞くことがよくあります。
「いやいや、期待しないことだよ」とか「傾聴が大切」とか、その類のアドバイスも山のようにあります。
新入社員との摩擦が成長の好素材となることもありますが、摩擦に消耗し、大事な成長の素材とそうでないものとが分からなくなるのはもったいないですよね。
私の場合、社会人12年目となり、毎年新たに入っている新入社員に対して、毎年同じテンションでぶつかることができなくなったことも、新入社員に対する接し方をかえるきっかけでした。
こちらがどれだけ手をかけ時間をかけ燃料を投下しようとも、響かない人にはビスケットのカケラほども響きません。
それであれば、大事な人を大事にするための前向きな戦略として、新人に割くエネルギーを抑えて大事な人に注ぐ燃料を確保する必要があります。
以前は、新人の力を引き出し、能力を伸ばしたいと思っていましたが、新入社員の成長は新入社員自身の問題であり、新入社員の育成は会社の経営陣の課題であって、実は私の範囲外だったと気付いたことも大きいです。
それを「自分自身の大問題」と思わせていたのは、「先輩は後輩を育成すべき」という目に見えない「常識」に過ぎませんでした。
そこで、こういう時に右往左往して消耗しないためには、色々な手札・パターンを持っておくことが有効です。
ある程度こちらの手札が豊富であれば、一つの手法に執着せずに、相手のタイプに応じて柔軟に別の手札を切り替えることができるので、省エネで済みます。
そうして余った燃料を、悩む価値のある悩みに投入して、心理的クオリティを鍛えることができます。大事な人を大事にするために投入して、自分が自然で居られる居場所を作ることができます。
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そこで、参考に私の新入社員への接し方を紹介します。
私は、会社で3回新人の教育係(メンター)をする機会がありました。
最初は入社2年目、次は一回目の休職直後、3回目は昨年です。
そうした経験を通じて身に付けた、私が軸としている人材育成の考え方は次のようなものです。
○人は「育つ」のであって「育てる」のではない。
○新入社員といえども、他人は自分のコントロール外のことだから、思い通りにはならないのが自然。
これは、教育係をやったり、アルバイト時代に新人を教えたり、家族との関わりの中で、伝える情報が過剰になるほど相手には響かなかったという経験に基づいています。
そういった経験、皆さんもありませんか?
これは、コーチングのなかでもかなりポピュラーな考え方です。
つまり、過剰に干渉すればするほど、人の自ら育つ力は弱まり、成長は鈍っていくのです。
考えられば考えるほど良くなることがないように、手をかければかけるほど、人が育つわけではありません。
ちなみに日本企業は、「労働力を投入すればするほど、会社は成長する」というこの固定観念に縛られ続けています。
平昌オリンピックでスターとなったカーリング女子日本代表も、考えるカーリングと言っていましたよね。
それは、コーチの指示待ちではないということです。
なぜなら、実際に試合がはじまれば、試合をするのはコーチではなく自分自身だからです。
人生も同じですよね。
人生においては、誰かの指示で行動することよりも、自ら考え行動する機会の方が、圧倒的に多いのです。
自ら考え行動して成長する力を高めるには、自分で考える機会を増やす、要するに場数を踏むしかありません。
そして、素材で鍛えられていくのです。
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過干渉は、そういった成長の貴重な機会をせっせと奪っていくことと同じです。
もちろん、その過程では「自分がやったほうが早い」というじれったい思いもするでしょうし、失敗も経験させることになるでしょう。
しかし、それこそが好素材なのです。
その過程を手出しをせずに見ていることこそが、育成だと私は考えています。
education という言葉が明治時代に日本語化されたときの、私の好きなエピソードがあります。
福沢諭吉は、education の訳は「発育」が適していると主張したそうです。
どうでしょう?
実際にeducationの翻訳語となった「教育」の「教え育てる」というニュアンスとは違います。
福沢諭吉はこう主張しました。
学校は人に物を教うる所にあらず、ただその天資の発達を妨げずしてよくこれを発育するための具なり。
天資の発達を妨げずしてよくこれを発育するため。
本人が育つことの邪魔するな、と言っているのです。
実際の翻訳語は「発育」とはならず「教え育てる」教育となり、日本の教育は「教える」、知識の伝達の場に過ぎなくなってしまいました。
私は福沢諭吉の考え方に共感します。
そこで、私の場合、新入社員に対しては年度当初に厳選した必要最小限のことだけを伝えて、あとは放任して、リアルタイムで起きたことにだけ対処しています。
もちろん成長のスピードは人それぞれであり、短期的には過剰に干渉した方が即戦力(日本企業が大好きなフレーズ)になるにきまっていますが、仕事人生は長いのです。
その人の人生は、その会社だけで終わるわけではありません。
長い目で見れば、この時期のトライアンドエラーはとても大切な経験です。
それを奪うことのほうが、私には抵抗があります。
伝えたことが芽吹かないこともありますが、どう消化して行動するかはその人の問題であって、私のコントロール外のことです。
また、新入社員の育成は、直接の業務でない限り、経営陣や管理職の直接の課題であり、私たちの関わりは必要最小限で構いません。
それを、一般の職員に育成目標を考えさせているとしたら、その会社はやばいですよね。冷静に考えて。
つまり、私の会社はやばいのです。
よって私が新入社員に伝えるのは、事例を示しつつ、次の3つだけということにしています。
理由は、仕事上とても大切なことにも関わらず、個々人に任されており、会社の研修では一切やらないからです。
1.仕事を進める時は、時間的な余裕に応じて次の順序で調べる。
(1)相手の文書・メールをよく読む
(2)引き継いだ資料、マニュアルを読む
(3)前例(過去の稟議書・資料、前任者に聞くなど)を調べる
(4)会社のルールを調べる
(5)他の部署の類似例などを調べる
2.書類の保管は、できるだけ丁寧な方法がよいが、時間的な余裕に応じて、次の順で方法を選択して整理する。
(1)時系列+項目別
(2)項目別
(3)時系列
3.データの保管は、ファイル又はフォルダで時系列と項目別・分類が分かるようにする。
これだけです。
経験を積んだ方に限って、こうした仕事の基礎ノウハウを軽視し、PDCAサイクルなどを好んで教えたがりますが、基礎ノウハウを個々人に任せることで会社は甚大な非効率を生み続けています。
それが、業務ごと部署ごと個人ごとのルールのガラパゴス化に繋がり、指示の五月雨化に繋がり、長時間労働に繋がり、本当に燃料が必要な分野に燃料を投入できず、失われた20年の日本企業になります。
PDCAのような全体を見渡す視点については、まず業務を一通り経験して、仕事に疑問が沸いたくらいで、伝えていく方が、右も左も分からない状態で聞くよりも効果的でしょう。
そもそも、そういったことを疑問に思う人であれば、こちらが教えるまでもなく重要な仕事の考え方には必ず辿り着きます。
最低限のノウハウさえ伝えれば、あとは失敗した時に、その人が持っているグッドな素質を歪めることがないように、少しフォローをするだけです。
私が人材育成で行うのは、たったこれだけです。
昨年度、この方法を実践した新入社員は、本人の資質もあってのびのびと活躍しています。