こんにちは、ぐっちです。
前回は、
認知療法が、ネガティブな感情を引き起こす
「物事の見方」にアプローチし、
バランスの取れた思考を養う技法であることをお話ししました。
この「気分を引き起こす物事の見方」を、
認知療法では「認知」と呼びます。
それで、認知療法、という名前なんですね。
たとえば、仕事でミスをして、
上司に怒られて、悲しくなったとします。
私たちはふつう、
「仕事でミスして、上司に怒られたから悲しくなった」
と、一つの流れとして捉えます。
でも、認知療法では、
その間にもう一つ、大事な要素があると考えます。
それは、
「その出来事を、どう捉えたか」
という部分です。
「仕事でミスして、上司に怒られた」という事実と、
「悲しい」という感情のあいだには、
・また怒られたらどうしよう
・私はいつもミスばかりでダメだ
・上司はもう私を見捨てたに違いない
といった、瞬間的な考えが入り込んでいます。
この、
瞬間的・無意識に浮かぶ考えのことを、
認知療法では「自動思考」と呼びます。
「自動」という言葉の通り、
これは意識して選んでいる思考ではありません。
お腹が空くとか、
トイレに行きたくなるとか、
そういった生理現象と同じように、
勝手に、自然に、湧いてきます。
つまり、
ネガティブな思考も、生理現象です。
おしっこと同じです。
ここが、認知療法のとても大事なポイントです。
認知療法は、
「ネガティブに考えてしまう自分はダメだ」
「もっと前向きに考えなきゃ」
と、自分を叱咤して
ポジティブ思考に無理やり変えていく方法ではありません。
生理現象を、
良い・悪いで裁かないのです。
私たちは、
「トイレに行きたくなる自分はダメだ」
とは思いません。
でも、思考に関しては、
「前向きに考えられない自分はダメだ」
と、
生理現象そのものを否定してしまいがちです。
そして、
それが自己評価や自己肯定感を
じわじわ削っていきます。
認知療法では、
生理的に湧いてくる
ネガティブな自動思考そのものを、
否定もしませんし、排除もしません。
「そういう考えが浮かんだんだな」
と、まずは認めます。
そのうえで、
「他にも、別の見方はないだろうか?」
と、視点を増やしていきます。
先ほどの例で言えば、
「上司に怒られた」という事実に対して、
・最近、上司も忙しくて余裕がなかったのかもしれない
・大きな問題になる前に気づいてもらえて助かった
・誰にでもミスはある
という捉え方も、
事実としては成立します。
どれか一つが「正解」なのではありません。
ただ、
一方向にだけ偏ってしまっている
「認知の癖」に気づき、
見方の選択肢を増やしていく。
それが、認知療法です。
なお、
ここで誤解してほしくないのは、
「生理現象だから、放っておけばいい」
「対処しなくていい」
という話ではない、という点です。
おしっこも、
我慢しすぎれば体に負担がかかりますし、
適切に扱う必要があります。
思考も同じで、
無自覚に振り回され続けると、
心が疲弊してしまいます。
だからこそ、
「まずは、これは生理現象なんだ」
と理解したうえで、
丁寧に扱っていく。
そのための技法が、認知療法です。
事実を一側面だけで決めつけて、
ネガティブな感情に飲み込まれるのではなく、
複数の見方があることに気づき、
しなやかに考える力を育てる。
認知療法は、
そのための練習法なのだと思います。
つづきます。
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