前回、障害者雇用の離職率についてデータや事例を書きました。
今回は実感ベースのお話をしたいと思います。
障害者雇用として1年と少し働く中で、だんだんとその難しさがクリアになってきました。
それが離職率の高さにもつながっていると思います。
こうした課題に、配慮が「仕組みとして」行き届くことで、誰しもが働きやすい、生きやすいい環境に近づくのではないかと思います。
特に日本人は精神論、マインドセットによりがちですが、仮に一時的にうまくいったとしても、その対応は属人化し、再現性がないからです。
以下、10個のポイントに整理してお話しします。
(1)スモールステップに関する認識の違い
私は、スモールステップとして「数か月から数年」の単位で業務の幅を広げていくことを想定していました。
一方、担当者からは「早く一人前の社員として成長してほしい」という期待や数週間単位で職務拡大を求める姿勢を感じ、入社から3か月程度で複数回にわたり高度な業務への挑戦を打診されることになりました。
私のペースを配慮しない対応でした。
体調不良の時期であっても、より一層の高度業務で気分転換を図ってはどうかと提案され、困惑を覚えることになりました。
就労支援団体さんから会社側に「障害者雇用の最大の目的は安定して長期に働くこと」と繰り返し指摘してもらいましたが、担当者の認識を「各人のペースを尊重する」というものに変えるには私の明確な体調悪化というモデルケースが必要でした。
(2)担当者の障害理解不足
担当者は書籍やセミナーで障害理解を深めていると説明していましたが、実務上の配慮は不十分であると感じる場面が多かったです。
記事にもしましたが、私の服薬量が増加した際には、「風邪なら治りかけで減るはずだが増えるのは違和感がある」と述べ、産業医へのセカンドオピニオンを勧められました。
「風邪」と「うつ病」は、障害当事者にとって不適切な比較であり、担当者への私の信頼を大きく損ねました。
また、これは多くの共通する場面を障害者は経験していると思いますが、担当者は「顔を見れば体調がわかる」と述べ、障害特性は無視して外見で判断しようとする傾向があります。
人は「目に見えるもの」を過信するのです。
視覚を発達させることで生き残ってきた人間とは、そういう生き物なのです。
私は出社のためにギアを上げている状態であり、見た目と実際の体調は一致しません。
(3)障害者雇用における過度なグループ化
これも記事にしてきました。
障害者雇用には、各部署に配属してそれぞれ上司と障害者雇用の担当が連携するパターンと、同じ部署(代表的なものは特例子会社)に配属させて一括管理するパターンがあります。
昨年採用された私と同僚は、同じ部署に配属されました。
担当者の「同じチームだから」という方針により、同一業務・同一行動といったお互いの関係性を強化する施策が取られました。
その結果、同僚の依存傾向といった特性もあり、私の情緒的負荷が蓄積することとなりました。
他にも、本来は双方配慮を必要とする障害者から障害者への直接の業務引継ぎなども行われ、私には過度な配慮が求められました。
担当者の方針は「障害者同士がフォローしあう穴が開きにくい強いチームをつくりたい」というものであるようですが、障害者は誰かをフォローするために働いているわけではなく、障害特性の相性を考慮しないグルーピングは合理的配慮とはいえないのではないかという疑問があります。
(4)難易度の極端な業務内容
当初の業務は超単純作業で、非常に単調でやりがいを感じにくかったです。
「障害者雇用は負担の少ない仕事」=「やりがいのない仕事」ではないと思います。
続けていくには、やりがいは必須です。
当初、社内の業務棚卸では100~200の障害者向け業務候補があると言われていましたが、実際には以下の理由から担当可能な業務はほぼ存在しませんでした。
・専門性が高い
・外部業者が担っており切り分けが困難
・業務単位が小さすぎる
・近く終了予定である
結果として、極端に単純な作業を続けるか、急激に高度な業務へ適応するかの二択となり、中間の選択肢が存在しませんでした。
また、担当者は該当業務だけでなく、「正社員なのだから」ビジネスの全体像を理解するよう求めてくる傾向があり、さらなる高度化に繋がっています。
(5)「見守り」から「監視」への変化
当初は「無理しないでください」「体調は大丈夫ですか」といった声掛けがありましたが、半年も経たないうちに消失し、その後担当者からの連絡は以下に限られるようになりました。
・細かなルール遵守の指摘
・新しい業務の提案
このため、連絡があるたびに「次は何を求められるのか」と不安を感じ、心理的安全性が低下しました。
また、担当者が唯一の評価者であるため、提案を断りにくい上下関係が形成されていると感じるようになったため、人事部署に相談し、担当者とのコミュニケーションには基本的に人事部署の人間も同席してもらうように私が裏で働きかける必要がありました。
(6)障害に関する知識に関する当事者へ負担を求める構図
担当者は「障害については素人」と繰り返し述べるため、以下のような業務を、病気を俯瞰して語ることのできる私に依頼してくるようになりました。
・障害の相性・特性に関する相談
・障害者支援・採用に関するシステムや書類の導入検討資料の作成・人事へのプレゼン
これらは、障害当事者が担うべき範囲を超えていると感じます。
私は確かに「自分の経験を生かして多様性の発展に貢献したい」と言っていますが、一方的に負荷が高くなるのは単なる「やりがい搾取」ではないかと感じ場面が多いです。
(7)業務高度化と待遇の不整合
以前書いたように、私の業務はシステムを用いるものへ移行し、さらに、上述のとおり障害に関する全般的助言も求められています。
同期の同僚は今も初期の単純作業が中心ですが待遇は同じままであり、業務レベルと待遇が連動する仕組みは不透明なままです。
そのため、私だけが高度業務へ適応する意義が見えにくと感じる状況を作り出しています。
(8)英語・成長要求の負荷
外資系であるため、入社後に英語使用場面が多いことが判明しました。
また、全社員が対象の「年1回の目標設定」も課されており、回復が難しい障害者雇用であっても成長を求められる風土を感じます。
(9)自ら発信しないと動かない組織風土
外資系だからなのか、「気づいて配慮する」文化は期待できず、障害当事者であっても以下が求められます。
・自ら積極的に発信すること
・継続的に説明し続けること
・自身で配慮を提案し続けるタフさ
私はなんとか試行錯誤しながら1年続けてきましたが、体調や特性によっては、これ自体が大きな負荷となると感じると思います。
(10)スーパーフレックスの実際の運用
私の会社はスーパーフレックスのはずですが、実際の障害者雇用部署の運用面では勤務時間は固定されており、この時間を変えたい場合は担当者に許可を得なければならないという形となっています。
これが人事も含めた会社の方針か担当者の管理したいという個人的な方針かは不明です。
さて、ここまで10個書いてきて思うのが、やはり「担当者の属人的な個性」に依存した仕組みの設計となっているということです。
外資系ですが、こうした面では非常に日本的と言えます。
多くが仕組みを整えることで、解決できると思うからです。
例えば、
・「関係性」と「評価」を一致させない仕組みづくり
・評価基準、業務難易度の整合性基準の可視化
・業務の分解(ジョブ・カービング)
・担当者の複数人化
・育成段階表を当事者と相談し作成
などです。
日本人はこうした仕組みづくりが本当に苦手ですね。
これも会社単位でやることは難しいので、障害者への「合理的配慮」として明文化してしまえばいいと思うのですが、
苦手なのは分かっているので、どこか海外の事例をそのままもってきて、とりあえず始めてみてもし課題があったら日本向けにチューニングするのでもいいと思います。
以上、今回まで障害者雇用3シリーズでした。
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