続けられるかたちを探して  ―うつ病というわたしの一部―

何度も壊れて、そのたびに生き方を作り直してきました。 うつ病とともに働き、休み、 障害者として社会と向き合う今があります。 「頑張れば報われる」から降りた先で見えた、 無理をしない生き方のメモ。 ここは、立ち止まってもいい人のための場所です。

優しさが限界に変わるとき ―― 距離を取るという選択

以前書いた  

障害者雇用の同僚の話の続きです。

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結論から書くと、  

彼自身は「学習障害」と主張していましたが、  

実際には「境界域知的障害」でした。

 

これは、あくまでわたし個人の観察と経験からの判断であり、  

専門家ではない立場での話であることを、  

最初に断っておきます。

 

そう疑い始めた理由は、以下のような点でした。

・文章の内容がうまく理解できない  

・固有名詞をほとんど覚えられない  

・自分の考えを言葉で説明できない  

・抽象的な概念が理解できない  

・性的な話題への関心が偏っている  

・会話が常に表層的  

・複雑な人間関係が苦手

・カタカナの記憶、発語が苦手 

 

これらの特徴から、  

わたしは「学習障害だけでは説明がつかないのではないか」と感じ、  

本人に主治医へ相談するよう促しました。

 

当初は  

「いや、学習障害ですよ」  

と強く反発していましたが、  

しばらくすると、

「ぐっちさんの言うとおりでした」

と、IQテストの結果について話してきました。

 

結果は、70と少し。

一般的な目安としては、  

小学校2〜4年生程度の認知水準と説明されることのある範囲です。

 

IQ70以下が軽度知的障害とされるため、  

いわゆる「境界域」にあたる数値だと言えます。

 

この頃には、  

上司や他の同僚たちも、  

はっきり言葉にはしないものの、  

同様の違和感を抱いていたようでした。

 

手帳上はADHDでしたが、  

前回も書いたとおり、  

多動性・衝動性・過集中といった特徴はほとんど見られず、  

むしろ幼児的とも言える言動が目立っていたからです。

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入社から10か月。

彼の、わたしへの依存は変わりませんでした。

何度も上司に相談し、

・座席を少し離す  

・上司からの積極的な業務サポート  

 (相談相手を変更する)  

・業務の切り分け  

といった対応をしてもらいましたが、  

効果はほとんどありませんでした。

 

彼からは、毎日のようにこんな質問が飛んできます。

「何時に休憩行きますか?」  

「○○には参加しますか?」  

「これ、ぐっちさんはどうしますか?」  

「新しい仕事はいつからですか? どんな内容ですか?」

興味がある、というより、  

とにかくわたしの動向を把握していたい。  

そして、それをそのまま真似する。

その状態が、ずっと続いていました。

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このあたりから、  

わたし自身の体に、はっきりした変化が出始めます。

・週末になると「週明けに会いたくない」と考えてしまう  

・理由のない不安が突然高まる  

・寝つきが悪くなる  

・食欲がなくなる  

これは、これまでの経験からも  

「危険サイン」だと分かるものでした。

 

ここで初めて、  

「これはもう個人的な対応の限界だ」と認識しました。

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状況を整理するため、AIにも相談しました。

すると、  

「これは障害の相性の問題である可能性が高い」  

という指摘が返ってきました。

 

一般論として、  

境界域知的障害のある人は、  

優しく、断れない人を見抜きやすく、  

そうした相手に依存し、  

その関係が固定化しやすい傾向があるそうです。

 

思い返せば、  

確かにすべて当てはまっていました。

 

そして、  

わたしの反復性うつ病性障害は、  

こうした情緒的な依存や負荷に対して、  

強い脆弱性があります。

 

つまり――  

障害の特性上の相性が、悪かったのです。

 

さらに言えば、  

彼と関わる時間が増えるにつれ、  

理由のはっきりしない不快感や緊張が、  

身体感覚として強まっていきました。

 

ここまで来ると、  

感情の問題というより、  

生理反応に近い状態でした。

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これはもう限界でした。

個人で抱える問題ではありません。  

組織の出番です。

 

わたしは、上司と人事に正式に相談しました。

上司は最初、

「こう答え続ければ、そのうち本人が考えるようになるのでは?」  

「4月に新人が入れば、関係性も変わるのでは?」

といった、やや的外れな反応でしたが、

・これは明確なSOSであること  

・新人を待てるほど、体調に余裕がないこと  

・組織として対応してほしいこと  

をはっきり伝え、  

上司・人事・わたしの三者で話し合いを持ちました。

 

結論は、次の2点です。

・上司・人事から、彼に  

 「ぐっちとのコミュニケーションは禁止」と伝える  

・座席をさらに離す  

正直なところ、  

顔も見たくない状態だったので、  

フロアごと分けてほしい気持ちもありましたが、  

まずはこの対応で体調の推移を見ることになりました。

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わたし自身、  

知的障害のある人とここまで密接に関わるのは初めてでした。

 

これほど強い依存が生じるとは、  

正直、想定外でした。

 

最初に  

「同じ障害者だから」と優しく接したものの、

それが依存という形に結実するとは。

 

彼に悪意がないことは分かっています。

 

ただ、  

知的障害者への対応が、  

ここまで重い負荷になる場合があるということを、  

今回、初めて実感しました。

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そして、  

わたしが取るべき対応は何かと考えたとき、  

構造摂理の回にも書いたとおり、  

答えは一つでした。

「距離」です。

 

森羅万象には、  

それぞれに適切な距離があります。

 

彼とわたしには、  

大きな距離が必要だった。

 

それ以上でも、  

それ以下でもありません。