ありがたいことに、
役所を出たことで、
新しい領域に足を踏み入れてます。
環境を変えると、
こういう刺激があるのはいいことだと思います。
刺激があるからこそ、
変化が起きるのね。
「変化を起こしたい」と思うなら、
悩みや戸惑いはむしろ必要。
そして、それを「明るく前向きにとらえる」ことは
もっと大事だと、
これまた新しい本が教えてくれました。
地域再生の「狂犬」
というイカす通り名をもった木下斉さんの
「凡人のための地域再生入門」です。
なぜかアニメーターを目指していたボクは
結果として「地域」に関わることが多かった。
14年間都庁で地方公務員をやってきたし、
8ヶ月間は東北の震災被災地の県庁で、
首都と地方の違いも見てきた。
そして今は、
島国の中の島国である沖縄で、
半官半民の観光協会で、
補助金が作り出す弊害を感じてます。
で、いろいろ悩んでいるときにおもしろよと勧められたのが、
木下斉さん。
いやですね、一言で言うと、
おもしろいです。
ボクが感じていた地方や地域の課題が、
小説形式でわかりやすく網羅されていて、
さらにご本人が当事者だけらこそ書ける、
乗り越えるポイントも書かれています。
全政治家・公務員必読の書
といっても過言ではないよボクの中では。
本書のストーリーは、
東京で会社員をやっていた瀬戸くんが
たまたま地方のシャッター街にある家業兼実家の整理をすることになり、
その中で地元でお店を成功させていた
幼馴染の佐田くんと出会ったことから、
実家の整理が思いがけない方向に向かい、
そこから様々な地域の課題と向き合うことに。
というありふれたストーリーなんです。
キャラクターも典型的だし、
「凡人のための」と言ってる割に、
主人公の瀬戸くんの相方になる佐田くんはあきらかに「超人」笑
でもですよ、役人やってた立場からすると、
このリアリティと説得力はすごい。
これは課題と真正面からぶつかった人間でしか描けない。
特に、補助金イベントの顛末とか
仲良しグループが始めた事業の顛末とか、
ボク自身も事例を知ってるだけにリアル。
ちなみに、公務員がモチベーションを上げられない理由も書かれていますが、
当たってると思います。笑
ちなみに、予算獲得が評価されて、
稼ぐ事業開発など本質的に地方のためになることが評価されない
人事評価にある、と書かれてます。
あ、あと
「愚痴を言うときは手間を惜しんで勝手に悩んでいるだけなので
余裕がある証拠」
とも。
いやあ、わーきゃーいってる連中に読ませたい。
ボクなりに、この本のポイントをかくと、
「地方にはいい人がいない」と必ず言われるが、
地方で頑張っている人はいて、
それはうまくいっていない人からすると都合が悪い事実なだけ。
うまくいかなければいかないほど補助金が出る仕組みのため、
地方の経営資源が補助金の獲得ための
調査の回答や報告書の作成といった、
地域住民には何も関係ないところに費やされてしまっている。
結局、地方活性化の成否は、
明るく楽しく、覚悟を決めて事業に取り組むメンバーが集まるか否かに
かかっている。
悩んで暗くなっている人を、
誰も助けてくれない。
むしろその暗さから、さらに協力者がいなくなる。
不安である時ほど明るく前向きに考えて、
不安の原因を特定し解決する方法を試してみるなどの
自ら動き出すことが必要になる。
事業立ち上げの際には、何をやるかとともに
誰とやるかを大切にしなければならない。
「何を言うか」より「誰が言うか」で、
多くの人は聞くか聞かないかを判断している。
リーダーシップは、その人の容姿、実績、日々の振る舞いなどから
判断される。
組織で仕事をしていた人たちは、
ある意味で個性を殺してしまっている人も多く、
個性豊かな地域事業者に何を言っても、
単なる伝達程度に終わってしまい、人が動かないことも。
どんなに合理的な説明をしたとしても
それだけでは人は動かない。
何か事業に取り組めば、必ず批判を受ける。
衰退するには衰退するなりの古い常識があり、
衰退を打開する事業に取り組めば、
その常識を覆すことになる。
逆に全員が賛成するような事業は、さらに衰退を加速させる事業。
クラボウの創業者大原孫三郎は、
「10人の人間のうち、5人が賛成するようなことは
大抵手遅れだ。7、8人がいいといったら、もうやめたほうが良い。
2、3人がいいと言う間に、仕事はやるべきだ」と語っている。
実際、補助金交付金漬けになっている沖縄に来て、
よりいっそううなずくことが多いです。
「何を言うか」より「誰が言うか」って、
まさによ。笑
被災地や都庁で共感を得ようとしてきて、
すごく感じたそれ。
何を言うかよりも、
どういう奴が言ってるかを
人は見てたと思う。
補助金とか交付金が、
地域で頑張っている人間を後押しするようなインセンティブになってないのも
まさにそうです。
代表的な地方交付税交付金がまさにそうで、
地域が稼げなければ稼げないほどもらえる仕組み。
むしろ、税金だから儲けてはいけない。
補助金のように、
お金を貰うのは一過性で終わってしまいます。
地域が稼げるということは、
地域に変化する対応力が生まれたということなので、
そこには持続性がある。
まさか、地域の問題でも、
同じ場所に辿り着くとは。
ようするに、
地域のことは地域のことが決めたらいいし、
自分のことは自分で決めようよ
ということなんだと思います。
本書の話を統合すると。
それは、ここのところのボクのテーマとも同じだし、
地域にいて思うことも一緒でした。
被災地は、
国の責任を追求することに労力を使いすぎて、
じゃあ自分たちがどういう地域にしたいのか、
という構想が描けてなかった。
そして、悲壮感がありすぎて
持続的な共感を生みにくかった。
ボク自身の在り方にも言えること。
悩んだ時こそ、明るく。
これが実はこの本の最大のメッセージかもしれません。
そして最後に、
これまで、都庁を変えよう、地方の県庁を変えよう、観光協会を変えよう、
としてきたわけですが、
この点についても木下さんの金言がありました。
これを読んだ瞬間、そっちの方にいくような予感がしました。
激動の現代において、
我々は常に新しいことへの挑戦を求められますが、
そもそも古い組織で新しい提案を通す労力は大きく、
さらに古いことをやめて新しいことに置き換えるには途方もない
努力が必要だったりする。
何かを止めるのは、何かを始めることよりも何倍もエネルギーが必要になる。
新しいことは、今ある組織ではなく、
新しい組織を立ち上げ、
新しい人を入れてやるのが近道です。
なぜか日本は、今ある組織をどうにか立て直すことに
変な使命感を抱く人がいますが、
所詮は会社も仕組みも概念にすぎない。
機能しなくなったら、
別のもので代替するのが効率的です。
読むとあたりまえなのに、
その視点はなかったのが不思議。
だから人間はやめられない。