こんにちは!
ketoraaaです。
5月になりました。
嵐の4月をサバイバルした方、お疲れさまでした。
身体に異変を感じた方、職場の相談室にいくなり、病院にいくなり、一刻も早く無理のない範囲でできそうな対応をとってください。
さて、私は2度うつ病で休職し、2度復帰しています。
いまは業務の割当を軽いものになっていることもあり、日常の生活には大きな支障はなく、旅行に行くこともできます。
そういった経緯もあって、「身近な人がうつ病になったが、何かしてあげられることはないか」「ちょっと体調が悪いようだ。どうしたらよいか」という相談を受けることが、度々あります。
5月になりましたので、4月の環境変化をきっかけに体調を崩した周囲から、そういった相談を受けている方もいらっしゃるかもしれません。
私は、相談を受けるたびに言葉に迷います。
というのも、うつ病の症状は千差万別で、一つとして同じものはないからです。
もちろん、平均はあります。ですが、平均は全てではありません。
平均ですから、そこから外れる現象が多いこともイメージがつくと思います。
相談者が、
○うつ病には何かしてあげるとよいことがある。
○うつ病とうつ病でない間には、明確な差がある。
という前提にある場合、この点を伝えることはとても難しいことです。
少なくとも私の経験や、同じくうつ病で悩む方の経験を聞く限り、何をやったらよくなるとか、何をやったら悪くなるとか、何ができたら完治とか、あまりそういうものはないようです。
あるのは、紙一枚分の差に過ぎません。うつ病とは、紙一枚分の差が、数十年と積み重なったことで、身体のバランスを崩して、冬眠状態になることに近いと思います。
そして、その一枚は、その人によって合うもの合わないものがあります。それも個性です。
つまり、あるのはその人その人の自然な道です。
医師は平均に基づく治療を行い、それが自分に合うか合わないかを判断するのは、自分に関する決定権をもっている私自身です。
私自身、5年間の治療で主治医から無理をしないようにブレーキを掛けられたことはあっても、何々をやりなさいと指示をされたことはありません。
復職訓練で会った方も、似た症状はあってもみな違いました。
同じ人でも、体調の段階によっても違いました。
ですから、親切心から他の病気や恋愛相談のように、「何々するとよいよ」「何々はよくないらしいよ」「何々しないとダメだよ」とアドバイスすると、単なる決め付け・押しつけになってしまい、その方の自然な生き方・気づきを妨げてしまう可能性があります。
そう伝えても、相談者は魔法のような技法、明確な差があると思っていますから、不満顔です。
大事なことなので何度も書いていこうと思います。
現在の医学におけるうつ病の対処法は、その人その人の状況・症状・体調の程度によって、その時その時にリアルタイムに起きたことに対処していくことです。
関連記事:うつ病の最終的な再発予防は、リアルタイムで起きたことに対処していくこと。 - ナチュラルなイキカタ
主治医にそのようにアドバイスされ、私もそう思います。
未来と過去には、うつ病治療の種は、ころがっていません。
未来は不安を生み、過去は後悔を生みます。
原因探しが問題解決につながるという、現代の基本的で一般的な、多くの人が身に付けている思考の型では、うつ病に対処することは難しいというのが、私の感想です。
その思考の型を、内省心理学というのでした。
関連記事:自己否定の習慣が変わるきっかけ - ナチュラルなイキカタ
私は、会社で散々PDCA!PDCA!と言われているので、PDCAサイクル症候群と呼んでもいいのではないかと思います。
では、身近な人がうつ病になった時、周囲は何もできることはないのでしょうか。
そんなことはありません。
紙一枚分は、できることがあります。
それは、薄く些細な一枚ですが、人生では大きな一枚なのです。
私の経験から3点、ご紹介します。
まず、うつ病について知ってください。
新聞でも本でも病院のホームページでもいいですから、これをきっかけに、うつ病がどんなものかを調べてみてください。
身近な人が発する小さなサイン・SOSには、様々なものがあります。
眠れなくなる、出かけなくなる、食べなくなる、口数が少なくなる、笑わなくなる、怒りやすくなる、自虐的になる、起きられなくなる、身だしなみが適当になる、物忘れが多くなる、など様々です。
うつ病について調べることで、そのサインがつかまえやすくなり、サインに動じることなく対処することができるようになります。
次に、あなたのことを見ているよ、関心あるよ、心配してるよというサインを送りつづけてください。
つまり、声掛けです。
天気がどうとか、近所のつつじが咲いた、かわいい犬とすれ違ったくらいの話題でかまわないと思います。
ニュースの話題などは、色々なものと関連付けられるため、避けた方がよいかと思います。
うつ病の最中には、ガチンコで話し合うことは負担でも、話さないと話さないで、「自分なんて誰も関心ない」「自分は終わった人間」「自分がいなくなっても何も影響ない」といった思考に囚われやすい状態になっています。
ですから、一日一言でもよいので、声をかけ続けてください。
何のリアクションもなくてもかまいません。
そのスモールステップは、はじまりです。小さな行動というスタートラインに立てれば、グルグルと同じところを回り続けて消耗するだけの状態からは脱することができます。
関連記事:【問題解決法】行動には「失敗」はない - ナチュラルなイキカタ
「おはよう」に対して「おはよう」と返してきたら、その日はそれで充分。またスモールステップを設定し、サインを送り続けてください。
最後に、無理強いすることなく本人が話し始めたら、その話を否定することなくおだやかに聞いてあげてください。
そして、機を見て医療機関の受診を勧めます。
あとは受診するかどうかはこちらのコントロール外のことですから、未成年でない限り本人に任せてよいのではないでしょうか。
「いこう」「治りたい」というエネルギーが、しずく一滴でも本人に沸いてこない限り、どのような周囲のアプローチも、否定という炎のガソリンになってしまいます。
しずく一滴の意欲に必要なガソリンは、休養です。
いつ滴ってくるかは本人次第ですから、じっくり付かず離れず見守る以外にありません。
できることをあえてあげるとしたら、この三つだと思います。
逆に、その先は本人の個人的な問題なので、踏み込むのは危険です。
一般的な悩み相談と同じように、あまりがぶり四つで組み合って「真剣」に相手の感情と向き合っていると、こちらの性質・状況・体調によっては、ネガティブスパイラルに吸い込まれていきます。
二人してガソリンを注ぎ合って、どんどん悲観的な方向に迷走してしまう可能性があります。
ポイントは、「一日2回声掛け」とか「話すのは一日30分まで」とか、物理的な決まりを作って対応することです。
そうすると、数字的な上限が来たら終わりなので、仕事や家事があるこちらも、持続可能なサポートが可能になります。
30年の蓄積があってうつ病になったのであれば、その堆積物を下ろすのには少なくとも同じ期間が必要です。
そのサポートなら、30年可能だという程度の負担にしておいてください。
でも、悲観的にならないでほしいのです。
私たちの人生の目標は、うつ病を制圧することではないでしょう。
生き生きとその人が自然に生きられれば、うつ病と共存してもよいのではないでしょうか。
そう考えると、うつ病と向き合っている時間も、人生の1ページと言えなくもありません。
人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である。
とチャップリンも言っています。
さて、「ちょっと体調が悪そうだが大丈夫だろうか」と心配な方は、ここまで書いてきたように、明確な差を素人が判定することはできませんから、ネットの情報を基に心配の種を開花させて消耗する前に、一刻も早く専門家の意見を聞いていただければと思います。
それが、大事な紙一枚分の行動です。